アマチュアが開拓したガレージキットの世界
ガレージキットの始まりとゼネラルプロダクツ
ワンダーフェスティバルとエヴァ、フィギュアとエヴァの関係を語るときには、まず日本のフィギュアの歴史の始まりまでさかのぼる必要があります。
今のようにキャラグッズの一ジャンルとしてフィギュアが多くのファンに受け入れられるよりも遙か前、フィギュアというのはごく一部のマニアの趣味でした。主にアマチュアが作り出したガレージキットと呼ばれる少量生産のキットで、少量生産だからこそ作れるキャラクターだったり、市販量産品では出来ないこだわりの造形だったりを楽しんでいました。日本では1980年代前半からそのムーブメントが起こり、初期はゴジラなどの怪獣や特撮ものが多く、当時のおもちゃに飽き足らなかった人たちが自分たちが欲しいと思える立体を手にするための手段でした。
需要があれば供給あり、そのガレージキットを商品として提供するメーカーも現れてきます。それが現在もホビーメーカーとして活動している海洋堂だったりボークスだったりするのですが、その中にゼネラルプロダクツというSFショップもありました。ゼネラルプロダクツは数多くのSF、アニメ、特撮等のグッズの製作&販売を行っていたのですが、主力商品のひとつとして、ガレージキットがあったのです。
そしてそのゼネラルプロダクツこそが、『新世紀エヴァンゲリオン』のアニメ制作会社であるガイナックスの前身。まずこれが「フィギュアとエヴァ」の繋がりのひとつめなのです。
ゼネラルプロダクツとワンダーフェスティバル
そしてこのゼネラルプロダクツは造形イベントを始めます。そのイベントは1984年に大阪でプレイベントを開催し約10ディーラーで参加者は700人を集め、翌年1985年には東京で第1回が開催されて60ディーラーで参加者約2000人を集めました。それがワンダーフェスティバルなのです。現在は海洋堂が主催・運営しているワンダーフェスティバルですが、始めたのはゼネラルプロダクツ。「ワンフェスとエヴァ」はここでも繋がります。
ワンダーフェスティバルと美少女フィギュア
このワンダーフェスティバル、現在でこそメーカーの新作フィギュアの発表やイベントなども盛んに行われていますが、基本的に主役はアマチュア。それぞれが作った当日版権のガレージキットをディーラーとして販売するのがメインなのです。初期は怪獣やロボなどが中心でしたが、やはり美少女キャラも増えて、ワンフェスでもかなり大勢力となってきます。『超音戦士ボーグマン』のアニス・ファームや『きまぐれオレンジ☆ロード』の鮎川まどかなど、フィギュアジャンルで一世を風靡したキャラも登場しました。
そして1990年代前半に、美少女フィギュアに革新を起こすキャラクターが現れます。それが『美少女戦士セーラームーン』。社会的ブームを起こし、20年経った現在でも圧倒的な支持を受けている作品ですが、フィギュアジャンルに与えた影響はとても大きいものなのです。この作品をきっかけに美少女キャラクターという2次元の存在を3次元に置き換えるための技術が急激に高まり、ノウハウが集まっていくことになるのです。
美少女キャラを似てて可愛いく立体化するというのは、今でこそ当たり前のようになっていますが実はこれは大変なこと。美少女戦士たちを2次元から3次元に置き換えるために様々な表現方法やテクニックが開発され、それがほかの原型師たちに影響を与え、さらにそれが改良、発展していくということが繰り返され、それまでとは異なる次元の造形が行われていくようになっていきます。この発展は、原型師の作家性の強いガレージキットだからこそ起こったことでもあります。
世間でも大ブームでしたが、造形イベントでも大人気。会場中がセーラームーン一色だったことも。ただし、これはワンフェスではなく、JAF-CONというバンダイが主催する造形イベントでのこと。当時、セーラームーンはJAF-CONでしか当日版権は降りなかったのです。
そして1995年8月。イベントとしてはJAF-CONに押されていたワンダーフェスティバル会場でひとつのガレージキットが発売されました。それが『新世紀エヴァンゲリオン』最初の立体、作画参考頭部モデルでした。『新世紀エヴァンゲリオン』がテレビで放送される2カ月前、「フィギュア・ワンフェスとエヴァ」の繋がりも本格的に表れてきたのです。
(続く)
- ※ ガレージキット
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メーカーが作るプラモデルなどと異なり、少量生産が可能なキット。素材は様々なものがありますが、現在主流になっているのはレジンキャストキット。白だったりアイボリーだったりの樹脂で出来ていて、組立&塗装の難易度は一般的なプラモデルよりは上。
今のように塗装済完成品のフィギュアが一般的になる前は、クオリティの高い造形のフィギュアはコレしかなく、一般商品として街中のプラモデル屋にも置いてありました。
原型師の技能や個性が直接的に造形に現れる作家性の強いアイテムです。
- ※ ワンダーフェスティバル
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1984年にプレイベントを大阪で開催後、1985年から原則的に年2回東京で開催されている世界最大規模の造形イベント。前回のワンフェスは1881ディーラー、55,687人の参加者でした。ゼネラルプロダクツが始めたものですが、1993年から海洋堂が主催を引き受けています。
大きな特徴として当日版権という独特のシステムが使われていることがあります。
なお、参加者のグループをコミケ等同人誌即売会ではサークルと呼称しますが、造形イベントではディーラーと呼ばれます。
- ※ 当日版権
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ガレージキットに限らず、原作者や著作権者の存在するキャラクターの製品化には、権利者の許可が必要です。ガレージキットの黎明期にはファン活動の名目のもとに、無許諾の製品が販売されていました(もちろん違法です)。ファンの技量が上がり、一般商品と変わりない(モノによってはよりハイクオリティな)製品が現れるようになると、この点が問題となりました。
この対策として発案された「当日版権システム」は、イベントの主催者が参加ディーラーたちの窓口となって、版権元からイベント当日限定の販売許可を得るというもの。これによって、ワンダーフェスティバルでは、アマチュアが正規の許諾を得た製品を販売できるようになりました。
掲載商品
公式作画参考用模型 エヴァンゲリオン初号機
頭部モデル(レジンキャスト組立キット)
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