Column 3SINCE 2000-2015

エヴァが後押ししたフィギュア製造技術の発展

エヴァとガレージキットテイスト

『新世紀エヴァンゲリオン』によって大きく変わっていったガレージキット。この変化は当日版権という枠に収まらず、一般商品にも大きな影響を与えます。
昔のアニメや特撮のおもちゃと、最近のものとを比べると根本的な方向性の違いを感じることがあるかと思います。かつてのようなおもちゃメーカーがおもちゃとしてデザイン・造形するものとは一線を画す方向性の造形が、一般商品として登場するのが現在では当たり前のことになっているのです。これはもちろん造形クオリティが全般に上がっていったということでもあるのですが、『エヴァ』の商品化に当たってより積極的にガレージキットテイストを取り入れていったことがこれを加速したと言っても過言ではないでしょう。
もともとマニア向けの商品ではそういったキャラクターの再現度やギミックなどのクオリティは求められていましたが、そういった考え方が比較的安価で手に入る一般的な商品にまで拡がったのです。

エヴァとカプセルフィギュア・プライズ

たとえばカプセルフィギュア(ガシャポンとかガチャガチャとか言われるアレ)。『エヴァンゲリオン』が放送された頃から、カプセルフィギュアで塗装済み完成品が登場し始め、21世紀初頭にかけてそのクオリティとボリュームは競争のようにとてつもない進化をしていきます。そこでも『エヴァンゲリオン』はひとつのキーとなった作品で、カプセルフィギュアジャンルの覇を競った海洋堂、バンダイ、ユージンの3社の内、海洋堂とバンダイの両方のメーカーから発売されています。リアル頭身の塗装済みフィギュアとしては最初期に登場していたり、カプセルサイズでありながら可動フィギュアだったり、様々な試みが行われてクオリティの底上げに貢献しています。もちろん海洋堂がガレージキットスピリッツあふれる商品を出し続けてきたことの延長線上であったり、バンダイのガシャポンの歴史の積み重ねだったりもするのですが、『エヴァ』はそれを活かせる素材であり、買い支えるファン層を持っていたということでもあります。
そしてプライズフィギュア(UFOキャッチャーとかに入ってるゲーセンの景品)。『エヴァ』のプライズは放送当時からセガプライズで登場していましたが、大きな変化があったのが2001年。宮川武、あげたゆきをというワンフェスや一般販売ガレージキットなどで多数の『エヴァ』フィギュアを作った原型師がプライズフィギュア原型を手がけるようになったのです。これは版権元からの推薦もあってのことですが、人気原型師のフィギュアが塗装済完成品のプライズで手に入るというのは画期的なことでした。その後もセガプライズの『エヴァ』は毎月のように新作が登場し、他にも人気原型師が何人も参加、プライズフィギュアのクオリティを大きく変えていくことになります。

エヴァとPVC製塗装済完成品フィギュア

その後2000年代前半からフィギュアを巡る状況が劇的に変化し始めます。まずそれまで大きめの塗装済完成品フィギュアというと高価なコールドキャスト製だったものが、現在一般的になっている安価なPVC製が増え始めてあっという間に主流に。そしてさらに2000年代中盤には可動フィギュアジャンルが急激に拡大。フィギュアはファンも増えてキャラクターコンテンツで重要な位置を占めることになります。
そんな中での『エヴァ』は、1997年の劇場版の公開から数年経って、マンガ連載は続いているものの新作があるわけでもなく、一般的な人気は沈静化。ですが立体関係での人気の高さは不動で、この時期の『エヴァ』はフィギュア・立体関係での活発な動きが続いているという状態でした。
そしてそのフィギュアブームの中『エヴァ』のフィギュアは多数登場。キャラクターとしての知名度ゆえに、ちょっと変わったコンセプトやデザインのフィギュアシリーズなどでも展開もしやすく、様々なバリエーションが登場しています。
この時期から『エヴァ』のフィギュア監修&チェックが厳しくなり、キャラデザインの貞本義行氏も本格的に監修に参加するようになりました。キャラとして生き残っていくために、ちゃんと監修してより高いクオリティのものを作らないといけないという考え方になっていったのです。

エヴァとフィギュアの20年

そして2007年から『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』がスタート。特に2009年に上映された『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』では新キャラや新メカ等が多数登場し、立体・フィギュアの新たなモチーフとして人気となり商品も一挙に増え、バンプレストの一番くじなど新しいスタイルのフィギュア商品でも展開されています。アニメーションの製作主体は庵野秀明監督が立ち上げたカラーとなりましたが、立体への理解の深さは変わらずアマチュア版権システムも継続しています。

20年前から現在まで、『エヴァ』はそのスタートから立体と密接な関わりがあり、フィギュア・立体ジャンルの発展と共にあり、その発展を加速してきました。その概略をざっと振り返ってきた記事ですが、立体は文章でもなく写真でもなく、その実物を見るのが一番。ワンフェスでは代表的なフィギュア・立体を集めてその歴史を振り返る展示を行っていますので、ぜひ今週末7月26日には幕張ビッグサイトのワンフェス会場へ足をお運びください!

※ コールドキャストフィギュア

PVC完成品が一般的になる前から出ていたもので、石膏と樹脂を混合した素材で成形するフィギュア。重量感があり、PVCよりも少数生産から対応可能ながら基本的に価格は高くなる。

※ フィギュアの価格

中国の工場の人件費だったり材料費だったりはどんどんアップし、かつて200円で出ていたカプセルフィギュアは現在ではロストテクノロジーに。PVCフィギュアもかつては3000円台だったものが1万円台半ばに。

※ ワンフェスの入場

ワンフェス会場に入るためには入場チケット代わりのワンフェスガイドブックが必要。当日会場で購入することも出来る。この連載とは違う視点で「エヴァと立体」をテーマにした記事が掲載されているので、そちらもあわせてどーぞ。

Column 1SINCE 1980-1994

アマチュアが開拓したガレージキットの世界

Column 2SINCE 1995-1999

エヴァンゲリオンの登場とガレージキットの進化

Column 3SINCE 2000-2015

エヴァが後押ししたフィギュア製造技術の発展

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Illustration:KIYOHIKO AZUMA
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