Column 2SINCE 1995-1999

エヴァンゲリオンの登場とガレージキットの進化

最初のエヴァのガレージキットとワンダーフェスティバル

1995年8月、ワンフェスに初めて登場したエヴァのガレージキット。
このガレージキットは、吉山治樹氏が原型を担当した作画参考用の初号機頭部をそのまま販売したもの。複雑な形状の初号機頭部を描くためこの作画参考モデルが製作され、使われたものなのです。
庵野秀明監督を始めとするアニメスタッフは、ゼネラルプロダクツとの関係もあり造形に対する理解が深く、作画参考用に立体を作ることの有用性に気づいていました。このモデルがあることで初号機がよりカッコよく描かれ、そのカッコいい初号機を見て吉山氏はよりカッコいい初号機の全身モデルを作り、さらにそのモデルに影響されて作画がより研ぎ澄まされるというキャッチボールが行われるという、アニメと立体の良い関係もありました。
雑誌以外の媒体で一般ユーザーの手に最初に届いたアイテムがワンフェスでのガレージキットだったということは、この後の「フィギュア・ワンフェスとエヴァ」の本格的な関わりの第一歩であり象徴的な話でもあります。
……ですがこの作画参考モデルは会場では10個も売れませんでした。少年エースで貞本義行氏のマンガが始まっていたり、月刊ニュータイプの表紙になっていたとはいえ、ほとんどノーマーク。多くの参加者にとっては何?これ、というキャラでした。この結果も当然といえば当然なのです。

エヴァの大ブームとワンダーフェスティバル

そして1995年10月、TVアニメがスタートします。当時の反響の大きさは圧倒的でした。商品化担当窓口でもあったガイナックスが積極的にホビーメーカーへも働きかけたこともあって、市販のガレージキット等立体アイテムも続々と予定が発表されます。
そんな中、最初に市販ガレージキットがファンの手に届けられたのも、放送中の1996年1月に開催されたワンフェス会場ででした。海洋堂とコトブキヤがそれぞれ綾波のフィギュアを販売したのです。もちろんそれぞれ大行列になっていました。
また、この会場で作画参考用の初号機頭部も再び販売されたのですが、この時は開場と同時に大行列ができ、200個以上が瞬殺!
そして、このワンフェスでは締め切りの関係でほとんど間に合っていなかった当日版権のガレージキットは、半年後の夏のワンフェスで大爆発! 会場中が『エヴァ』のガレージキットで埋まったのです。
『美少女戦士セーラームーン』&『機動戦士ガンダム』という大人気タイトルの当日版権がバンダイ関係社が主導するイベントのJAF-CONでしか降りなかったため、その勢いに押されていたワンフェス。それをエヴァの当日版権ガレージキットによって再び活気づかせるというのもひとつの目的だったのですが、それを達成した瞬間でもあります。
その後、当日版権だけではなく一般販売のガレージキットも『新世紀エヴァンゲリオン』が席巻、多数のフィギュアが登場し、中には毎月のように新作を発表するメーカーも。フィギュアの造形表現も更に進化を重ねていきます。『エヴァ』をきっかけにして造形を手がけるようになった人も多く、その後の業界を支える原型師を数多く生み出すことにもなりました。『エヴァ』によってフィギュアの質も量も大きく飛躍したのです。

エヴァのガレージキット状況の変化とワンダーフェスティバル

市販品ガレージキットは、2000年代に入った頃からその商品としての役割をPVC製塗装済完成品フィギュアに譲っていくことになります(このあたりは次回で)。ですが、アマチュアが造形を生み出すことを楽しむ手段&場としての当日版権ガレージキット&ワンダーフェスティバルは、その後も造形ジャンルで重要な位置を占めています。
『エヴァ』のガレージキットを巡る状況も変化しています。2000年頃からは『エヴァと愉快な仲間たち 脱衣補完計画』からの当日版権が登場、新しいモチーフとして脱衣キャラは大人気となり多数のガレージキットが生まれることになりました。これはパロディという意味合いも含めて、当日版権では自由に作って欲しいという意図によるもの。さらに2002年には当日版権からさらに一歩踏み込んだ形のアマチュア版権システムをスタートさせます。いずれもアマチュアが手がけるガレージキットだからこそ出来ることを提供し、造形意欲をかき立てる方策でもありました。
ガレージキットとワンダーフェスティバルという場で、この20年『エヴァ』の果たした役割はこのようにとても大きなものなのです。
そしてそのガレージキットから生まれた文化が、『エヴァ』とともに一般商品をも席巻していくことになるのです。

(続く)

※ エヴァと愉快な仲間たち 脱衣補完計画

1999年11月にガイナックスから発売されたPC用の脱衣麻雀ゲーム。『新世紀エヴァンゲリオン』と『トップをねらえ!』からレイやアスカ、ノリコなど女性キャラだけではなくゲンドウやカヲル、オオタコーチなど男性キャラも登場、麻雀に勝つと相手が脱衣していくというもの。人気漫画家やイラストレーターが原画を描いている。

※ アマチュア版権システム

当日版権に変わるシステムとしてガイナックスが始めたもので、イベント当日だけではなく年間契約の形で一定の申請個数までのガレージキットの製造・販売を認めるというもの。当該イベントの会場しか販売許諾されない当日版権と異なり、年間を通して複数のイベントでの販売や、個人によるネット通販も可能。これによりディーラーがミニメーカー的な取り組みを出来るようになった。

Column 1SINCE 1980-1994

アマチュアが開拓したガレージキットの世界

Column 2SINCE 1995-1999

エヴァンゲリオンの登場とガレージキットの進化

Column 3SINCE 2000-2015

エヴァが後押ししたフィギュア製造技術の発展

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Illustration:KIYOHIKO AZUMA
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