Interview #01エヴァンゲリオンが証明した、フォントのチカラ

フォントワークス株式会社

『:序』のエンドロールで、隣にいた妻が号泣した!

三原:「エヴァにおいては、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』のときに初めて弊社名がエンドロールに出ました。公開直前にスタジオカラーのプロデューサーさんから問い合わせがあり、柴田と初めてお伺いしました。以後は関連グッズ製品化の際にもサポートをさせていただいています」

柴田:「TV放映から10年以上経っていましたが、実は対面でご挨拶したのはそのときが初めて。プロデューサーさんとは『やっとお会いできましたね』と言葉を交わしまして(笑)」

三原:「私はいわば営業担当。今はスタジオカラーさんはじめ様々なアニメ、ゲーム制作会社さんを担当していますが、そもそも入社が'00年なので、旧作のブームはいちファンとして体感していた人間です。『:序』のときは妻と観に行ったんですが、エンドロールで隣にいた妻がいきなり号泣したんですよ。何だろうと思ったら、うちの名前が出てきたのがうれしかったって(笑)」

柴田:「(笑)。実のところ、'00年前後の関連グッズなどには『マティス』が使われていない製品もあったんです。特に本当に初期のころ、他業界のメーカーさんで『マティス』を使ったのは、UCCさんのエヴァ缶くらいじゃなかったかな。それだけ日本語のDTP環境が各社で整っていなかったんですよね」

三原:「弊社は、その制作インフラの構築を90年代から模索し続けていた会社でもあります。エヴァの新劇場版以降、ボンズさんの『鋼の錬金術師』をはじめたくさんのアニメ会社さんとお付き合いがありますが、これだけアニメやゲームの世界に深く入り込んでいるフォントメーカーも珍しいと思いますよ。ちょっとビジネスチックな話になりますが、現実問題としてフォントの使用許諾は各フォントメーカーでかなり違うんです。アニメの場合、TV放映したものをDVDやBlu-rayのようにソフト化して販売するビジネスモデルがありますよね。あるいはそれを再放送したり、紙媒体に印刷することもありますが、'00年前後はこういった二次使用においてフォントの使用料金を支払ってもらうという考えが、国内フォントメーカーとして当たり前でした。コンテンツがメディアを変えて永遠に生き続ける上で、ひとつのフォントに対して延々とお金を払わなければならない仕組みがあったんです」

『:破』の劇場用パンフレットより。『:序』でのクレジットは社名のみだったが、『:破』からは書体協力と表記されるようになった。

『:破』の冒頭シーンに登場した日本語字幕に用いられたのは、同社の『ニューシネマA』というフォント(写真はカタログより)。

三原氏が現在も保管しているUCCのエヴァ缶。発売された'97年当時、『マティス』の名は世にほとんど知られていなかった。