Interview #07パルコにアニメショップができた理由

株式会社パルコ
手塚千尋

歴代No.1の
総展示数2000点

「ちょうど'13年の初夏。その年の秋に新劇場版『:Q』の公開が告知されていた時期です。僕はそのとき名古屋店のギャラリー担当から、秋に会場に空きがあるから何か企画がないかと相談されていました。そのことを武藤さんに何となく話したら、彼の口から『EVANGELION 100.0』の企画が出てきたんです。これは'95年のTV放送時から今まで発表・発売されてきたエヴァ関連のプロダクトや企画を集め、“モノとコト”という側面からエヴァの歴史を振り返る企画。当時、'13年夏から銀座松屋で初の大型作品展となる『エヴァンゲリオン展』の開催が決定していたので、僕らパルコとしては違う形でエヴァにアプローチできるネタが欲しかった。聞くと『100.0』は武藤さんが数年前から温めてきた企画だとのことで、それならぜひ名古屋でやりませんかと。これまた実験的な企画でしたが、その後『:Q』が11月17日に公開すると発表され、この公開日に合わせて展覧会を開くことになりました」

プロダクトを100種類集めて展示する。'12年11月から約1ヶ月間行われた展覧会『EVANGELION 100.0』だが、アイデア自体はシンプルだった。しかしその相手は、'95年のTV放送時から幾千、幾万ものキャラクターグッズが発売されてきたエヴァンゲリオンである。

「アイテムのリストアップだけで実質2ヶ月。版権グッズの歴代担当者へ取材もしましたが、すでに入手不可能なモノも多いし、同じプラモデルでも何十種類とあるから、どう振り分けるか頭を悩ませたり。グッズの手配はガイナックスさんと新劇場版以後の版権グッズを担当するグラウンドワークスさんにご協力いただきました。ところが各社の倉庫に眠るグッズの量が段ボール数百個分と、また途方もないボリュームで(笑)。そこから狙いのモノを探し出すために、各社の倉庫の荷物を弊社が利用している物流センターにゴッソリ移動して、僕とRADIO EVAスタッフの数人でダンボールを空けて探し出したんです。三鷹出身のスタッフが偶然に綾波の三鷹市ポスターを発掘したり(笑)、面白いこともあったけれど、物流センターをダラダラと何日も借りてはいられない。結局24時間ぶっ通しの肉体労働になりました」

企画立ち上げからグッズの大捜索まで、約3ヶ月の準備期間。やっとの思いで名古屋パルコギャラリーに展示物を運び込んだのがオープン2日前。展示物の総数は2000点を越えていた。

「もちろん会場での並べ方は事前に決めてあるのですが、あまりに数が多くてモノが細かい(笑)。特殊なトイ製品が多いので設置に時間がかかって。ギャラリー設営にはデコレーターという専門スタッフもいますが、特に海洋堂のリボルテックなどは、ポージングにも特殊なテクニックが必要なフィギュア。解ってる人に任せないとカッコよく展示できないんです。そこでたまたま名古屋が地元で、偶然里帰りしていた『EVANGELION STORE』のスタッフが来て、急きょ設置作業を助けてもらうという出来事もありました」

2日前に会場入りし、設営を終えたのはなんと展覧会オープンの数分前(!)。2日連続の徹夜でスタッフが憔悴する中、手塚氏がボソッと放った“…やるしかない”の一言は、今も関係者間で名言扱いされている。

「ひとつのコンテンツのプロダクトのみで展覧会が成立してしまうのは、後にも先にもエヴァくらいしかないと思う。『100.0』は結局その年の名古屋でナンバー1の入場者数となり、その後1年かけて大阪や渋谷などへ巡回しました。福岡パルコに巡回したときには図録となる書籍も出版できて、僕が初めて企画から手がけた大型展覧会としては成功だったんです。展示数でいっても、歴代展覧会の中ではナンバーワン。風変わりな企画でしたが、そこにいつものパルコらしいお客様が沢山足を運んで下さっている様子を観て本当に感動しました。また、パルコの展覧会は通常渋谷でスタートして全国へ巡回するものなのですが、地方での立ち上げというイレギュラーな展開を許諾いただいた名古屋店スタッフにも本当に感謝しています」

名古屋パルコギャラリーを騒然とさせた展覧会『EVANGELION 100.0』。翌年1月には渋谷パルコミュージアムなどに巡回し、最終的にはパルコ店舗だけでなく、宮城県にある『石ノ森章太郎ふるさと記念館』での巡回も果たした。展示された品々とその解説は、パルコ出版から発行された書籍『EVANGELION 100.0』で読むこともできる。