1983年、東京・池袋に第1号店をオープンさせたアニメショップ『アニメイト』。その生みの親であり、店頭販売される様々なアニメイトグッズの企画・制作を行うのが、株式会社ムービックだ。ショップや関連イベントに並ぶ“アニメグッズ”という特殊な商品。それはアニメイトユーザーのような人々をターゲットに、このムービックが進化・発展させてきたジャンルと言っても過言ではない。現在、年間で約4000点以上の商品を世に送り出す同社にとって、エヴァンゲリオンという空前のヒット作がもたらした影響は一体どれほどのものだったのか。エヴァとともに20年間を歩み、作品同様に自らも変化し続けてきた人々にフォーカスする『route 2015』。インタビュー第2回は、同社でエヴァンゲリオン・グッズの企画を担当してきた安田勝己氏の物語をお届けする。
通算で10万枚を売った名作『全話Tシャツ』
「『新世紀エヴァンゲリオン』のTV放映が始まってからしばらくの期間、僕らの仕事場はちょっとしたパニック状態になりました。TVアニメとして、それまでにないものすごい勢いで当たった作品でしたから、いくらグッズを作っても店頭に置いたらすぐさま売れていく。当時は多くのスタッフが日夜頭を悩ませながら手を動かし、エヴァものをどれだけ店に送り込めるかってことばかり考えていました」
アニメグッズの定番と言えばキャラクターTシャツ。それが1柄につき何枚くらい売れるかご存知だろうか。国内最大手のアニメショップで販売されるグッズを30年間作り続けてきた安田氏いわく、それは「1柄で数百枚売れればヒットといえる世界」なのだそうだ。
「ほんの10年くらい前まで、アニメのTシャツと言えばキャラクターの絵柄がドーンとプリントされているものが当たり前で、イベント以外ではさほど売れる商品ではなかった。そのころに作ったエヴァTシャツのひとつが『全話Tシャツ』でした。TVシリーズ各話のサブタイトル画面と、旧劇場版のサブタイトルをプリントしたもので全32種類。これが通算で10万枚以上も売れたんです。なかでも人気だったのは、第壱話の『使徒、襲来』でした」
エヴァ誕生20周年の現在も売れ続けているロングランヒット商品『全話Tシャツ』。それは黒地のボディに、極太明朝体『マティス-EB』で書かれた白い文字がプリントされただけの、非常にシンプルなTシャツだ。当時のアニメファンからすると、キャラクターの絵や作品タイトルが一切省かれたそのデザイン自体、かなり常識破りなものだった。
「発売当時は、アニメイトのスタッフに猛反対されました。『そんなに沢山のTシャツをどこに置くんだ!』って怒られましてね(笑)」。
route 2015・第2回インタビューに迎えるのは、その全話Tシャツをヒットさせた仕掛人。アニメイトや映画館などで販売されているエヴァンゲリオン・グッズの企画制作に、20年間ずっと携わってきたムービックの安田勝己氏だ。数多のアニメ・グッズを世に送り出してきた彼もまた、エヴァとの出会いを経て、いままた新たな物語を紡ぎ始めている。