Interview #023000点のエヴァンゲリオン・グッズを作った男

株式会社ムービック

アニメは好きだけれど、アニメに囚われていたわけじゃない。
そこがいまの自分に繋がっている

ところでこの安田氏。新卒で入社したムービックで30年間もアニメグッズを作っている人物なのだが、学生時代までは決して生粋のアニメオタクではなかったらしい。
「小学校高学年で洋楽のハードロックに出会って、中学校からバンドでギターを弾いてました。四畳半フォークが流行ってたころにツェッペリンやパープルを熱心に聴いてたので、かなりマセてた方ですね(笑)。やってたのはインストのプログレッシブ・ロック。実はかなり本気で、放送局のコンテストで地区予選を勝ち抜いたりしてました。ただインストのバンドは決勝で勝てない。メンバーみんなで挫折を味わって、その後仲間のひとりは別のバンドでメジャーデビューしたんですが、僕は大学在学中に親父を亡くしたこともあって、マジメに就職しようって思ったんです。池袋の大学だったので、同じ街にあるアニメイトの存在は何となく知ってました。当時は音楽が生活の大半を占めてましたが、主要なアニメはひと通り観ていたし、小さなころから翻訳物のSFも大好きだったんです。ただアニメファンの本当のスゴさを実感したのは、ムービックに入ってから。そこから日本のオタクのあらゆる歴史を超吸収して(笑)、いまに至っています」

安田氏にとって、アニメの世界は音楽ほど自分に近くはなかったが、心の深い部分で共通点を感じる場所だった。
「活字SFマニアだった僕が、この仕事を始めてから文句ナシに“素晴らしい!”って思った作品は、『王立宇宙軍 オネアミスの翼』と『新世紀エヴァンゲリオン』だったんです。特にエヴァは、ちょうどムービックで働いて10年目の作品。自分がものすごく好きなモノを仕事で扱っていると実感したのは、正直そのときが初めてでした。それはすごく貴重な経験だったなと感じるんです。いまもたまに思うんですよ。あのとき僕が音楽を本当に仕事にしてたらどうなってたかって。この業界って、アニメが大好きで入ってきたのに、仕事しながら自家中毒状態になって、むしろアニメが大嫌いになってしまうような人間がたまに出てくる。僕はアニメも好きだけど、それだけにのめり込むタイプじゃなかったんですよね。作品を観るときも、音楽と同じ感覚で『ココが気持ちいい!』ってところを何回も繰り返し観てるタイプ。エヴァンゲリオンの周りには、実は僕みたいな人が結構いるんです」

現に安田氏はいまもギターを収集しバンド活動も続けている。またあるときからはランニングに目覚め、近年は毎年東京マラソンに出場するという一面も持つ。“アニメの人”という一言ではとても括れないパーソナリティの持ち主だ。
「元来飽きっぽい人間なんです。だからこそ、仕事の場でエヴァっていう大好きなものに出会えたことはラッキーでした。旧劇場版が終わった後も、エヴァだけは商品化を辞める気にならなかったんですよ。とにかくしつこくやり続けてましたから(笑)。エヴァストアのような店舗を企画したり、いま『SuperGroupies』のようなファッションコラボアイテムを作っているのも、結果的にはそういう性格が影響してるのかもしれませんね」

Column

  • 02
    『SuperGroupies』とは?

    安田氏が'13年に始めた洋服・雑貨の通販サイト。主にアニメ・ゲーム作品と様々なアパレルブランドのコラボレーション商品を扱っている。アニメグッズを日常的に気負いなく使ったり、身に付けたりしたいというユーザーをターゲットにしており、ファッション性の高いアイテム展開が話題に。今後は家電やインテリアなどライフスタイル全般にまつわる様々な商品を手がけていきたいという。
    http://www.super-groupies.com/

    RADIO EVAと共同で企画した女性向けブランド『RADIO EVA DUO』の商品。

    エヴァストアオリジナル柄となる、貞本義行氏のコミックをコラージュしたスニーカー。

株式会社ムービック

1983年創業。アニメショップ『アニメイト』に並ぶキャラクター商品の企画・制作・販売をトータルで手がけるキャラクター事業や、劇場映画作品のパンフレットやグッズ制作、各種イベント事業などを行う総合エンタテイメント企業。
http://www.movic.jp/