Interview #023000点のエヴァンゲリオン・グッズを作った男

株式会社ムービック

秋葉原と原宿では、売れるアイテムが違うんです

ムービックが作るアニメイト向け商品以外にも、様々なメーカー・ブランドによる関連グッズが存在するエヴァンゲリオン。それらの商品はエヴァンゲリオンの版権元が直接運営する公式Web通販サイト『EVANGELION STORE』で一挙に取り扱われていた。
「そのWebストアを、リアル店舗化できないかと考えたんです。なぜなら小売りこそ僕らの得意分野。そこに豊富なオリジナル商品を供給できるラインもある。もちろん前代未聞の試みですが、いまやっておかなきゃダメだと。ちょうどそのころ、富士急ハイランドさんのアトラクション『EVANGELION WORLD』に併設したショップがスゴい数字を出していたこともあり、ムービック的にはすぐにGOサインが出ました。今までにないアニメのリアル公式ショップを作って、そこを共同運営させていただけないか。そうエヴァンゲリオン側に提案したんです」

新劇場版のプロモーションの場として有効なこの提案はエヴァンゲリオンサイドでも歓迎、快諾され、すぐにプロジェクトが発足した。こうして安田氏の働きかけがきっかけとなり、'11年に原宿の竹下通りにオープンした『EVANGELION STORE TOKYO-01』('14年10月から池袋のP'パルコに移転)。その空間は従来のアニメショップとは異質のものだった。2階建てのうち、入り口となる1階に陳列されたのは主にアパレル商品。エヴァンゲリオン側は、企画当初から渋谷・原宿界隈という立地にこだわったという。
「アニメショップではなく、エヴァンゲリオンスタイルというものを提案する場所にしたい。それがEVANGELION STOREが希望するコンセプトでした。だから立地は秋葉原ではダメだったし、店内もアニメの世界観を模したしつらえではなく、原宿というロケーションを踏まえた演出が求められました。結果アパレル商品はもちろん、既存のアニメグッズに至るまで、いままでの僕らのお客さんとは違う層の人々に、モノが売れていくさまを目の当たりにしたんです。原宿で出店すれば、秋葉原で売れるモノとは違う商品がちゃんと売れる。アニメグッズは、僕らが思っていた以上にポピュラーなものになっていたんですよね。また、お客さんもそこで買い物以上のある種の体験を楽しんでくれるということがわかったんです。アニメグッズが飽和状態にあったなかで、エヴァストアは僕らのようなメーカーが次なるステージを見つける大きなきっかけにもなりました。この経験を経て僕が'13年に新しく立ち上げたのが、様々なアニメ・ゲーム作品とコラボレーションした洋服や雑貨を企画・販売するセレクトショップ的ECサイト『SuperGroupies』なんです」

スニーカーブランド『UBIQ』やアウトドアブランド『Columbia』など、おしゃれなアパレルブランドとアニメを結びつけたファッションアイテムを販売する『SuperGroupies』。作品への愛をしっかり匂わせつつ、大人の日常生活にもなじむデザインの数々は、トレンドやその作品のファンのライフスタイルも計算した洗練されたものになっている。
「『SuperGroupies』のスタッフは、アニメプロパーで育ってきた人間が3分の1程度。あとはITベンチャーやアパレル出身者など、違う畑の人間たちがゴッチャになっています。ただ共通点としてみんなアニメ好き。バックボーンが違うから対立することもあるけれど、そういう異業種の人間同士が一緒にやらなかったら、このプロジェクトは軌道に乗らなかったと思いますね。僕らはエヴァストアにそのことを学ばせてもらったんです。アニメという垣根を越えて真剣なモノ作りをすれば、その商品を求めてくれるお客さんは必ずいる。アニメのキャラクターグッズが今後やるべきこと、やれることについての一番大きなヒントと回答を、僕らはエヴァストアから得たんです」

'11年原宿にオープンした『EVANGELION STORE TOKYO-01』。原宿という立地になじむ洗練された建物と、アパレル商品を中心に構成された内装は原宿を歩くファッション・キッズたちの目を引いた。

エヴァストアのオープンを機に生まれたムービック発の新キャラクター『ゆるしと』。世のゆるキャラ、カワイイブームに即したユル~いデザインは女性を中心に人気を集め、いまや店の看板商品のひとつになっている。このような新機軸の取り組みも新劇場版以降の商品展開における大きな特徴だ。