Interview #05フィルムに
残されていた執念

ソニーPCL株式会社

TVシリーズを観たのは
実は初めてでした(藤森)

ポストプロダクションというと作品を視聴する側からすればなじみの薄い存在だが、我々が昔に比べて安価に入手できるようになった映像ソフトも、実は彼らの地道な作業なしには成り立たない。

雪田「やっぱり裏方の仕事ですからね。本来ならインタビューで発言させていただくこともおこがましいと感じているくらいです。それに僕は技術者ではなく営業なので、やることと言ったら『仕事を取ってくるぞ!』と意気込むくらいのもので。あえていうなら、現場で悩み苦しむスタッフを見守り続ける役…というところでしょうか(笑)」

そう語る雪田氏は同社の営業担当。パッケージメーカーから仕事を受注し、最終的に製品を納品するところまでのスケジュールや、作業の流れを決める立場にある。

雪田「僕はそもそも、映画やアニメが特別好きでこの業界に入ったタイプではないんです。高校を卒業してアメリカのコネチカット州にある大学へ進学したんですけど、それもただ海外で学生をしてみたいという軽い動機でした。実はそのとき同じ寮にいた日本人が、エヴァのVHSを持っていたんです。日本でもアメリカでも、勉強しない学生ってやっぱりヒマなんですよ。それで'97年ごろ、あまりに退屈だからふたりで土曜日に1日かけて全話観て。当然、1度観ただけでは意味も分からなかったんです。でも面白かったから、翌日の日曜日にまた全話観たという(笑)。それがエヴァとの出会い。帰国後も映像について専門的な勉強などはしなかったけれど、仕事としては面白いだろうとテレビ番組の制作会社に入ってADをしました。そこからいくつか映像関係の会社を経て、たまたま今の会社に出会ってるんです。'01年のことですが、入っていきなりエヴァのDVD BOXの担当になって。全然ドラマチックでも何でもなくて恐縮なんですけれど(笑)」

一方の藤森氏は編集担当。パッケージソフトの編集から、映画やアニメをTV放送向けに編集する作業などを主に担当している。

藤森「僕は'01年の入社です。それ以前は映像系の専門学校に通っていて、そのときフィルムの現像をお願いしていたラボがソニーPCLでした。弊社にはポストプロダクションだけなく撮影チームもありますし、幅広く仕事ができるだろうと思ったんです。僕はそこでたまたま編集の部署に入ったんですが、そもそも僕みたいに映像制作全般を学んできて、あえて技術職である編集を目指すという人はあまりいません。僕もそもそも興味があったのは実写映画やディレクターの方でしたから、当然アニメはほとんど観ていなくて、エヴァを初めて劇場で観たのも新劇場版の『:序』だったんです」

雪田「もっと言ってしまえば、藤森は今回のDVD、Blu-rayの仕事を請け負うことになって初めてエヴァのTVシリーズを観たんですよ」

藤森「そうなんです(笑)。ただ、機材や映像をいじることは自分にとって面白いことなので、題材は何であれ仕事の楽しさはどれも同じ。それにこれは働きながら分かってきたことですが、編集ってスタジオにこもって黙々と作業するだけではなく、実はチームワークなんです。それも社内だけではなく、例えばキングレコードさん、今回のカラーさんとか、色んなクリエーターたちとコミュニケーションをとりながらモノを作っていく。そこがいちばん面白いなと思っていて」