Interview #05フィルムに
残されていた執念

ソニーPCL株式会社

フィルムから伝わる
制作当時の息づかい

今回のBOXセットの制作にあたっては、幾度となく目を皿のようにして本編を見直しているふたり。

雪田「最終的なチェックの工程だけでも5~6回通して観ました。編集段階で全話を部分ごとに繰り返し観ていますから、トータルの回数はちょっと数え切れません。ただ不思議なことに、何回観てもいつの間にか見入ってるんですよね。例えば『今日はリツコさんの眉毛をチェックするぞ!』と思っていても、あちこちに何かを見つけて驚くことが未だにある」

藤森「僕は最初に観たとき正直内容を把握しきれなくて、編集作業をしつつ5回目くらいを観たころからだんだん理解が深まってきたんです。作業しながら本当に色んなことを発見しますね。例えば今ならCGで処理できる数字や文字を人の手で描いていたり、こんなところまでちゃんと設定があるんだなとか。僕はいまフルデジタルのアニメのパッケージを手がける機会が多いですけれど、エヴァのフィルムに込められた情報量はやっぱり圧倒的。作画や動画のテクニカル的な部分も含め、制作期間の短いTVシリーズのセルアニメで、こんなことまでやっていたんだっていう驚きは観る度に感じます。やっぱり生のフィルムですから、ダイレクトに伝わってくるんですよ。その熱量というのが」

雪田「当時のスタッフが作品に込めた、いわば執念のようなものですよね。セル画って、描いた当時の作業現場の息づかいまで閉じ込めてるようなところがある。フィルムを見ていると、『このシーンはセルの撮影台が汚れてたんだろうなぁ』とか(笑)、当時の制作状況までリアルに伝わってくるから面白いです」

'03年に発売されたエヴァのDVD BOXをはじめ、TV放映される多くのアニメ作品においてそのパッケージソフトを手がける彼ら。

雪田「当時は今ほど機材も整っていなかったので、実はあのDVDはかなり試行錯誤して作ったんです。映像なんて、最終的に思い通りになっていればその作業プロセスなんて何でもいいんですよ。だから、あの当時は今回よりもずっとトライ&エラーが多かった。でもその時に限界まで高画質に挑戦し、納得していただける製品を作れたからこそ、僕らにも独自のノウハウが蓄積されました。その後もキングレコードさんとは『ふしぎの海のナディア』など様々なパッケージを作ってきたので、今回のBOXセットも必然の流れだったと思うんです」

TV初放送のときはLD・VHS。その後にはDVD。そして新劇場版から展開されているブルーレイ。偶然ながらも新作の公開と記録メディアの移り変わりのタイミングが一致し、それぞれのメディアで爆発的なヒットを飛ばしてきたエヴァンゲリオン。

雪田「でも、結局のところは内容が面白いから売れ続けている。それに尽きるんじゃないかと僕は思いますけどね」

藤森「ちなみに今回のブルーレイでは、追加の修正含め、作業工程の情報もきっちり記録しています。個人的には、例えば次は4Kをやるとか、また高画質化の話があったとしたら、今度はもっとシンプルにやれるんじゃないかなと(笑)」

雪田「…それ、よく言いましたね(笑)。絶対タダじゃすまないと思いますけど」

藤森「でもエヴァって、きっと時代が何年変わっても観続けられる作品ですから。4Kの先だってもちろんあると思うんです」

雪田「まぁ、一度エヴァを経験していれば忍耐力もつきますからね。技術もそれだけ蓄積されますし、弊社としては本当にいい経験になっているんです。その都度、力の入れようがものすごいですから、悩みはきっと尽きないと思いますけれどね」

Sony PCL Inc.

ソニーPCL株式会社

映像コンテンツの企画・制作からポストプロダクション、イベント等の企画・制作・運営など、先進的な映像制作技術を駆使した映像コンテンツのトータルプロデュースを行う。

http://www.sonypcl.jp/